藤井基二さん(平成22年度卒)を紹介します!
今回紹介するのは藤井基二さん(平成22年度卒)です!
藤井さんは現在、尾道市久保2の路地裏で、午後11時に開店し、午前3時に閉店する古書店「弐拾db(にじゅうデシベル)」を営まれています。
中学で本の面白さに目覚め、好きな詩人である中原中也を研究しようと、中也が住んだ京都の龍谷大学文学部に進学した藤井さんが、尾道で全国でも珍しい「真夜中の古本屋さん」を開くに至ったその経緯や、お仕事の内容などについて、今回、色々と質問に答えていただきました!
◎「本校を卒業してから今の仕事につくまでの経緯を教えてください」
元々、日本文学の研究をしたく文学部に進学しました。大学は京都に暮らしてみたいという思いから、京都の龍谷大学に進学しました。在学中は主に文学研究の基礎的な授業をとりつつ、部活動の茶道部に励みました。
大学入学当初から、就職する気がなく(というよりも就職活動をしたくなかった)のもありましたが、より専門的な研究がしたかったので、大学院進学を考えました。ですが、金銭的余裕等で諦める形に。就職活動は思いのほか、すぐに決まってしまい、束の間は安心したのですが、自分の本当にしたいことは何なのか不安にはなりました。そんな思いのなか、卒業間際に身内に不幸があったり個人的なことが重なり、精神的にも厳しい状態になりました。
そのため、就職先の研修期間中ではありましたが、内定を辞退する運びとなりました。
その後無職で卒業し、ひとまず実家福山に帰郷。実家で過ごしながら、この先の将来について考えていた時、ふと尾道空き家再生プロジェクトについて思い出しました。
元々、高校生の時からニュースなどで活動についてチェックしていたので隣町に変わったことをしている人たちがいる。という印象を持っていました。再度、ホームページやフェイスブックを確認するとNPOが運営するゲストハウス(簡易宿泊所)「あなごのねどこ」のスタッフ募集が。英語必須の業務でしたが、「なんとかなるだろう」という漠然とした思いで、応募面接のうえ、チェックインスタッフとして採用していただきました。
(尾道空き家再生プロジェクトについては、つるけんたろうさんの「0円で空き家をもらって東京脱出!」朝日新聞社に詳しいです。漫画で読みやすいので高校生にもおススメです)
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00107/
ゲストハウスの一スタッフとして働きながら、海外のお客さんや地元に暮らす住民、移住者と交流するなかで、よく行っていたカフェで、お店や常連客から「なんか(お店)せんのん?」という話題に。尾道は比較的安い物件が多いことや先輩移住者たちが様々なお店を作ってきたことから、新しいお店を開きやすい環境が整っています。
なんとなく、思いつきで、「するなら古本屋かな」と話していたら、現在の店舗となる物件を発見。管理はNPOが受け持っていたため、代表に掛け合い、安く借りることができました。
その後、2016年四月に古本屋 弐拾dBとしてオープンしました。
◎「今の仕事の内容を教えてください」
昼間は引き続き、ゲストハウス「あなごのねどこ」にてチェックイン業務をしながら、仕事が終わったあと、深夜23:00-27:00.は自分の古本屋をオープンする変わったダブルワークをしています。
ゲストハウスでは、宿泊客の対応や予約処理などがメインになります。
古本屋では、名前の通り古本を掃除し、並べ、販売をしています。
棚の配置や、見え方、常連さんが何を読むのか、何が好きかを考えながら棚を作っていきます。
築約50年の元医院を改装したレトロさも魅力の一つ
◎「今の仕事のやりがいや今後の目標などを教えてください」
ゲストハウスの仕事は、まず様々な地域のお客さんと出会えることだと思います。
国内だけでなく、海外のお客さんも多いのでそんなお客さんと交流しながら、今まで知らなかった音楽や、話や価値観を知ることができるのは素直に楽しいです。
古本屋は、なによりもお客さんが探していた本、大事にしたいと思える本を古本屋を通して届けることができる事がなによりも幸せです。現代はネットで何でも買えてしまう時代でもありますが、直に店頭でお客さんとコミュニケーションをとりながら本(商品)を届けられるのは、実店舗の良さでしょうか。
また、僕のお店は平日は深夜営業なので、ちょっと変わったお客さん(いい意味で)が多く訪れるのが面白いです。酔った帰りのお客さんから、遥々深夜の古本屋へ訪ねて来てくださる方。眠るのにもったない夜に散歩がてらに立ち寄る近所のお客さん。そんなお客さん達と同じ空気を吸いながら真夜中、本と共に過ごす時間は何にもかえがたい時間です。
◎「最後に、後輩達に何かメッセージをお願いします」
僕は高校の在学中は、勉強もあまりできず、クラスでも目立たない、凡庸な生徒でした。
彼女もいませんでしたし、同級生には「あいつは将来大丈夫なのか」と言われるようなちょっとあかん感じもありました。
そんな僕でも、なんとかこうして今は暮らしています。働き方は多様になっていて、就職や進学することだけが答えではないと思います。
自分にとって何が大事かどうか、きっとまだ分からないと思います。僕もまだ分からないです。けれど、分からないなりに考え続けて、自分が納得する道を模索するしかないかもしれません。
あとは、自分で決めて動き始めると助けてくれる人が必ずいます。そんな人たちとの時間は大切にしてください。
この先、失敗やどうしようもない状況が起こると思います。僕も一度、シューカツで失敗しました。そんな時に、支えになる言葉や声をかけてくれる人が必ずいます。その声を大切にしてください。
もし、いないのなら僕のお店に来てください。土日はお昼もオープンしています。
何もできないかもしれませんが、お茶くらいは出せるかもしれません。お菓子は持参していただけたら助かります。
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ちなみに、店名のデシベルは音量の単位で、「古本のほのかな声に耳を傾けて欲しい」という願いから名付けたそうで、そんな藤井さんの想いに共鳴するように、お店には深夜にも関わらず数人から十数人が来店、中には東京や九州から訪れる常連客もいらっしゃるそうです。
「深夜の古書店ではさまざまな人と出会え、本当に楽しい」と語る藤井さん。これからも全国の古書愛好家から愛される、ユニークで素敵なお店であり続けてくださいね!
お忙しい中ご協力くださり、ありがとうございました!