2021年10月22日

竹山誠さん(平成20年度卒)を紹介します!

今回紹介するのは竹山誠さん(平成20年度卒)!

竹山さんは中高一貫の10期生として本校を卒業後は、

長崎大学の医学部に進み、現在は東京都の

「JCHO東京新宿メディカルセンター」

循環器内科医として勤務されています!

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今回、医師としての激務の中にも関わらず、

当コーナーへの出演依頼を快諾してくれました!

最前線で活躍する現役の若手医師さんによる

貴重な体験談の数々、医学部希望者はもちろん、

広く医療方面に興味のある在校生の皆さん

ぜひ読んで欲しいと思っています☆


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①本校を卒業してから今の仕事につくまでの経緯を教えてください。

近大福山を卒業し、長崎大学に入学して医学部で6年間勉強しました。
6年生の時にはオランダのライデン大学に留学に行かせてもらいました。ライデン大学では元々興味のあった循環器内科に配属させていただき、当時世界最先端の医療を経験する事ができました。日本ではつい最近始まった治療が既に数多く行われていました。ここでの経験は本当に刺激的で、循環器内科を志望するきっかけになりました。

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大学6年のオランダ留学


長崎大学を卒業した後は、自分で研修する病院を選ぶ事になりますが、全国の色々な所から志高い医師が集まってくるであろう東京で病院を探すことにしました。10カ所くらいの病院を見学に行き、一番勉強できそうだと感じた今の病院(JCHO東京新宿メディカルセンター)に研修医として就職しました。2年間の研修を終え循環器内科に進みました。

 

②今の仕事の内容を教えてください。

循環器内科では、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や不整脈、心不全などの疾患を主に担当します。
心筋梗塞という病気は、まさに一刻を争う病気です。心臓の血管が動脈硬化のせいで詰まってしまい、詰まった先の筋肉が壊死(心臓の筋肉が死んでしまうこと)してしまう病気です。

"Time is muscle"という言葉があるくらい、1秒治療が遅れる毎に膨大な数の心筋組織が死んでいき、後遺症になるのはもちろん、傷んだ細胞から心臓が止まる不整脈が出て突然死する事もあります。

それを防ぐために、救急隊が「心筋梗塞が疑われる患者さん」と判断するとそれ用のホットラインが鳴り、24時間いつでも僕たち循環器内科医が呼ばれて緊急で検査、治療を行います。

医療の進歩により、カテーテル治療という手や足の血管から心臓へ管を通して詰まった血管を広げる治療で救命できる患者さんが増えていますが、心筋梗塞によって壊死してしまった部分は後遺症としてその後の患者さんの心不全(心臓の力が弱いために肺に水が溜まり呼吸困難の症状が出る病気)に繋がるなど、その後の人生に大きな影響を与えます。

その他にも不整脈を止めるカテーテル治療やペースメーカー手術、心不全の患者さんの強心剤や人工呼吸器を使った治療など、治療する疾患は多岐に渡ります。

そうした患者さんの入院の管理や外来での診療、そして当直の勤務などがあり、その合間で学会発表の準備などをする事になります。

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診察風景のイメージ(患者役は同僚の方です)


忙しくないと言えば嘘になりますが、もちろん休みもあって、休日は東京ドームや神宮球場にカープを見に行くこともできますし、なにしろ東京なのでとにかく娯楽にも困ることはなく、充実した毎日を過ごしています。

 

③今の仕事のやりがいや今後の目標などを教えてください。

今年医師7年目になり、少しずつですが色々な仕事を任せてもらえるようになりました。心筋梗塞や狭心症のステント治療やペースメーカー手術の執刀を任せてもらえることも多くなり、心不全や不整脈で入院した患者さんの入院治療やその後の外来診療を任せてもらい責任の重さも感じますが、何よりやりがいを感じます。また、日々の臨床の傍らで、珍しい症例の報告や疾患についての研究成果の発表などを学会や研究会でさせてもらっています。

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初めての学会発表


少しずつできることが多くなってきていますが、循環器のどの分野も極めきることができない匠の世界でもあり、自分にはできない技術が沢山あり、そして毎年のように新たな技術やマスターすべき新治療が出てきます。

心筋梗塞を例にとると、心筋梗塞を起こした心臓の血管に最終的に2.25mm〜4.0mmのステントを入れ、血流を改善させるために数十個以上の工程があり、その工程一つ一つに使う器具や技術が毎年のように論文や学会で発表され、世界中の循環器内科医が日々競って技術を磨いています。心筋梗塞以外のあらゆる細分化された分野でも同様に、目覚しいスピードで治療技術が進化しています。

それらを今後日々習得していき、より多くの患者さんの命を救うことを目指し、日々精進していきたいと思います。

 

④後輩達に何かメッセージをお願いします。

医師を志している方、医療の世界に興味がある方もいらっしゃるでしょうか。

医学はおもしろいです。勉強すればするほど、人間の生命を維持する仕組みの複雑さに驚かされ、また、まだわからない事だらけであることにも驚かされます。そして医学の進歩の速さにも驚かされます。10年前の医学の常識とされていた事の中には現在は真逆の治療が正しいとされている事も数多くあり、そして現在も日々様々な臨床試験が世界中で発表され、病気の予後を改善させる治療が少しずつ、そして確実に進化していっています。

今後もiPSによる再生医療でさらにできる治療も増えていくと思われますし、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑先生で有名になった免疫チェックポイント阻害薬によるがん治療も急速な進歩を続けています。

心臓の領域でも、今まで外科手術で胸を大きくメスで開かないとできなかった弁膜症の手術がカテーテルで治療できるようになってきていますし、心臓・足・首の狭い血管を詰まる前にカテーテルで治療できる技術が発展しています。不整脈もカテーテルで治療ができるようになっていますし、心不全の薬も画期的な新薬が次々と日本でも使えるようになっています。そして、それらはおそらく10年20年後には古い治療となり、更に医学は進歩し続ける事でしょう。

そんな目まぐるしい進歩を見せる医学の力を持ってしても、全ての人間はいつか死んでしまいます。医師になって7年間ですが、これまで担当させていただいた患者様で残念ながら亡くなってしまった方も数多くいらっしゃいました。漫画の『ブラックジャック』の中で、主人公ブラックジャックの師である本間先生が、「人間が生きものの生き死にを自由にしようなんておこがましいとは思わんかね・・・」と言うシーンがありましたが、医学はこれ程までに進化しても、無力でもあるのです。

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出典:『手塚治虫 TEZUKA OSAMU OFFICIAL
https://tezukaosamu.net/jp/character/288.html


そして生命の自然の摂理に抗おうとするこの無力な医学は、一生勉強する意義のある分野だと僕は思っています。この勉強を通して、僕たち医療者は全ての患者さんから多くの事を学びます。医学は命と向き合う学問であり、だからこそ魅力的であり、一生勉強するべき学問だと思います。

みなさんの中にも医学の道を選んでくれる人がいると嬉しいです。いつか一緒に働けたら嬉しいです。

 

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……とここまででも、竹山さんの医学への熱い想い

感じられる素晴らしい内容だったのですが、

実は今回竹山さんにぜひにと無理を言って出演して

もらったのは、竹山さんがコロナ禍のただ中にあった

東京都新宿で医療従事者として奮闘されていたから! 

以下、とても貴重な現場での体験談です!

 

⑤今回の「コロナ禍」の体験をお願いします。

2021年10月現在、当院では700人以上のコロナの入院患者さんを治療してきました。2020年3月上旬頃から、当院でもコロナの発熱の患者さんを調べるとPCRが陽性となる人が出るようになりました。また、3月下旬に羽田空港で検疫が始まった際には、前日に東京都から急遽派遣の要請が来て僕も派遣されることになりました。ヨーロッパやアメリカなどの海外からの渡航者のPCR検査を300〜400人程度行い、連日数人の陽性が判明し徐々に国内でも変異株の報道が出始めるようになりました。

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羽田での検疫業務


そして2020年4月からは当院でもコロナ患者さん専用の病棟を作る事が決まりました。病棟を1つ(今では2つ)コロナ専用にする必要があるため、別の病棟に患者さんに移っていただき、待てる検査や手術の目的の入院を制限する所から始まりました。コロナの入院患者さんでは、肺の専門の先生を中心に内科医で(ピーク時で人手が必要な時は外科系の先生も)チームを作り、数週ずつ交代で担当していきました。

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コロナワクチン医療者の先行接種


デルタ株が蔓延してからは、若年、中高年でも人工呼吸器やECMOが必要となったり、全く持病のない若者でも酸素投与や点滴治療が必要な中等度に至る例も数多く経験しました。 ベッドは満床にも関わらず中等症以上の患者さんが入院し、ほとんどの人が酸素の吸入や点滴治療を受ける状況であるため、早めに退院できる人が少なく余計ベッドが空かず、重症でも入院先が見つからない人が多く見られることとなりました。持病のない方が急激な悪化の末、亡くなる例や、重症化し重篤な後遺症が残る例も経験しました。

ピーク時には都内の多くの病院で院内感染が次々と起こり、救急の受け入れがストップとなりました。当院では2病棟分、約60ベッドにまで拡大しましたが常に満床で、退院した人数だけ入院が入るという状態が続きました。満床の場合でも救急車の受け入れ要請の電話は鳴り続け、満床の場合は断り続けなければならない、といった日々が続きました。ほとんどの救急車は何十件と断られていて、患者さんは何時間も救急車内で待機している状態でした。当院まで2時間くらいかかる都外から搬送依頼が来る例も出てきました。

命に関わるような心筋梗塞や脳梗塞のような患者さんでも受け入れ先が見つかるまで時間がかかる例が相次ぎました。通常心筋梗塞患者さんは一番近くの病院に運び、1秒でも早く治療するのが基本ですが、当院にも心筋梗塞の患者さんが1時間程度かけて運び込まれる例が何例もありました。無事救命はできたものの’Time is muscle’である心筋梗塞にとって治療までの時間が長くかかり、大きな後遺症を残すことになった患者さんもいました。

患者さんの中には、家族や大切な友人に移してしまって後悔を漏らす患者さんもいらっしゃいました。中には自分は軽傷ですぐ退院できる中、移してしまった家族が重症化してしまった方の落胆している様子は忘れられません。

2021年10月現在は第5波が安定化の兆しを見せていますが、ピーク時にはこうした医療崩壊を経験し、コロナの怖さを実感しました。

そしてそれ以上に感染爆発が生じた時の医療業界のシステムが脆弱であること、そして社会全体がここまで大混乱に陥り、どのニュースを見ても批判に満ちた報道だらけになっている状態を目の当たりにして大きなショックを受けました。

これから完全にコロナが収束するまでに、どれだけの時間がかかるかは分かりませんが、医学界、そして社会全体に残された課題は山積みで、今後向き合っていく必要があります。

僕自身としても、自分ができることは何かを考えながら行動し、今後の仕事に打ち込んでいきたいと考えています。

 

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……いかがでしたでしょうか? ニュースなどでは

見聞きしていたコロナ禍の東京で一体何が起こっていたのか……

私も竹山さんの報告を読みながら、

改めて新型コロナ感染症の恐ろしさが身に染みると共に、

そんな恐るべき感染症に必死に立ち向かい続けた

医療従事者の方々にただただ頭が下がる思いです。

 

竹山さん、今回は貴重な体験談をお寄せいただき

本当にありがとうございました!(^^)/

まだまだハードな日々が続くとは思いますが、

今後のますますのご活躍を心から応援しています。

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なお、竹山さんからは、今回のコロナ禍に関連して

在校生のみなさんにこんなメッセージもいただいて

いますので、最後に紹介します

「皆さんもコロナ禍で、思い描いていたような学生生活とは行かなかった部分もあったかも知れません。しかし、いつの日かコロナに打ち勝ち、新しい日々が始まることでしょう。
皆さんがこの特別なコロナ禍での学生生活で経験したこと、そして夢に向かって努力したことが実を結ぶことを祈っています」



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